演目紹介
谷桃子バレエ団
「Fiorito」より第4楽章
振付:伊藤範子
本作は谷桃子バレエ団の70周年記念として伊藤範子が振付けた作品であり、団の歴史と共に歩んでくださった福田先生に、これぞという作曲家をご推薦いただきました。
その作曲家、カリンニコフはロシアでは知る人ぞ知る才能の持ち主であり、「もし彼が人並みの寿命を全うしていたならば、ロシア最高の音楽家の一人になったであろう」と謳われた程の人物です。
彼の交響曲第2番はらせん階段状に上昇していくような、循環する主旋律が特徴です。そのSpiralはまさに、当団の創立から現在まで継承してきた〝伝統〟に、新しいものを取り入れながら〝革新〟する私達のサイクルそのものと、伊藤は感じ取りました。さらにバレエ団の歴史ある古典レパートリーをオマージュした振付もスパイスとして盛り込むことで、団として高次の芸術へ昇華・飛翔するイメージを表現しています。
今回は福田先生への感謝と敬意を込めて、さらに進化した作品へと再構築しております。
おそらくバレエ作品では世界唯一となるカリンニコフの楽曲と共に贈る、私達ならではのシンフォニック・バレエをご堪能ください。
東京バレエ団
「ドン・キホーテ」“グラン・パ・ド・ドゥ”
再振付:ウラジーミル・ワシリーエフ
セルバンテスの小説「ドン・キホーテ」をもとにした、マリウス・プティパ振付、レオン・ミンクス音楽によるバレエがモスクワで初演されたのは1869年のこと。このバレエはその後、アレクサンドル・ゴールスキーによって大幅に改訂され、これが現在、世界中で上演されている『ドン・キホーテ』の演出の基本となりました。東京バレエ団が2001年より上演しているのは、世界的ダンサー、ウラジーミル・ワシーリエフが演出・振付を手がけたヴァージョンです。その特徴は、2幕仕立ての簡潔でスピーディーな展開と、テンポの速さが際立つエネルギッシュな踊り。舞台上の人物たちの生き生きとした演技も魅力です。
このグラン・パ・ド・ドゥが登場するのは終幕、ドン・キホーテの助けで結婚を許されたキトリとバジルの結婚式の場です。華やかなアントレ(導入部)で始まるのは、跳躍や回転、リフトなどの華麗なテクニックがふんだんに盛り込まれた主役二人の踊り。キトリの二人の友人のヴァリエーションがこれに花を添え、舞台の熱気は最高潮に達します。
東京シティ・バレエ団
「真夏の夜の夢」Act2より
振付:中島伸欣、石井清子
シェイクスピアの戯曲を基に創られた、東京シティ・バレエ団オリジナル版「真夏の夜の夢」は、福田先生と、振付を担当した中島伸欣、福田先生とは1968年の弊団創立前から親交のある石井清子が話し合いを重ね、メンデルスゾーンが『真夏の夜の夢』を演劇として上演するために作曲した楽曲に、「無言歌集」や「美しいメルジーネの物語」などの楽曲を追加し、グランドバレエとして2003年7月に初演しました。
本日は、妖精たちの気まぐれが起こした恋騒動の末、無事に元の鞘におさまり結婚した者たちの永遠の幸せを祝福する、妖精王オーベロンと女王ティターニアのパ・ド・ドゥをおおくりいたします。
「ロミオとジュリエット」より“バルコニーのパ・ド・ドゥ”
振付:中島伸欣
「ロミオとジュリエット」は世界中で愛され、多くのバレエ団でも上演されている作品ですが、本日ご覧頂くのは、東京シティ・バレエ団オリジナル版です。中島伸欣の演出、中島伸欣、石井清子振付による本作は、わずか5日間の物語を風のように一気に駆け抜けるスピード感で、命を賭して求め合う、若い二人の悲しくも美しい恋を描いています。弊団創立以来、「ジゼル」「白鳥の湖」の他、多くのレパートリーの音楽構成を手掛けて頂いている福田先生は、中島の求める疾走感を表現するための希望を快く受けとめて頂き、本作が誕生しました。
今回は、二人が初めて心を重ねるバルコニーのパ・ド・ドゥをご覧いただきます。二人が分かち合う恋の喜びをどうぞお楽しみください。
牧阿佐美バレヱ団
「飛鳥 ASUKA」より“すがる乙女と竜神のパ・ド・ドゥ”
振付:牧阿佐美
「飛鳥」は生涯をバレエに捧げた牧阿佐美が生前最後に振り付けた全幕バレエ作品です。原版は1957年、母・橘秋子が「飛鳥物語」として初演。1962年には片岡良和氏に作曲を依頼し、管弦楽による全幕作品として上演しました。
以後、時代とともに手を加え、2016年、牧阿佐美バレヱ団創立60周年記念公演において、世界に発信できる日本のオリジナル作品「飛鳥ASKA」として新制作しました。
日本を代表する洋画家・絹谷幸二氏の美術を最新の映像技術で舞台に映し出し、創出された宇宙的な空間の中、いにしえの都・奈良を舞台に竜神に愛された舞姫の悲しい運命が壮大なスケールで描き出され、日本の美とバレエが融合したバレエファンタジーとして大きな話題を呼びました。初演以来、内外で再演を重ね、牧阿佐美バレヱ団の重要なレパートリーのひとつとなっています。
福田一雄先生には、牧阿佐美バレヱ団のみならず橘バレヱ学校や関連団体の公演で音楽監督や指揮を務めていただいてまいりました。本作品では、1965年、牧阿佐美バレヱ団の芸術選奨文部大臣賞受賞記念公演「飛鳥物語」において指揮をしていただきました。
今回は、終盤で披露される竜妃となった舞姫と竜神による、牧阿佐美ならではの色彩とニュアンスに溢れた美しいパ・ド・ドゥをお届けいたします。
K-BALLET COMPANY ※演目が変更となりました
「シンプル・シンフォニー」
振付:熊川哲也
「シンプル・シンフォニー」は2013年に大阪フェスティバルホールのリニューアル・オープンを飾る作品として、熊川哲也が英国を代表する作曲家ベンジャミン・ブリテンの同名曲に振り付けた抽象バレエです。曲調異なる4楽章から成る味わい深くも技巧的なこの交響曲を、文字どおり一音たりとも取り逃すことなく可視化し、クラシック・バレエの多面的な美を描き出します。超絶技巧が織り込まれた密度の濃いステップを、優雅に、ダイナミックに、そして時にコミカルに紡ぎながら、3組の男女が多彩なフォーメーションを展開する様は、まさに“生ける名画”を見るよう。高い技量と音楽性なくして踊りこなすことのできない本作は、今やK-BALLETCOMPANYの代表作の一つとなっています。
カンパニーの創立以来、福田先生は「白鳥の湖」「海賊」「シンデレラ」など、重要なレパートリー創出において、音楽見識を惜しみなく注いでくださり、熊川と深い交流を続けてきました。本作「シンプル・シンフォニー」はまさに、福田先生とともに培った熊川の音楽的経験が集約されている作品です。“シンプル”という名とは裏腹に息もつかせぬ展開で音楽と舞踊が溶け合う、華麗でエレガントな視覚美の世界をご堪能ください。